プロアングラーによるルアー開発の情熱から生まれしルーツを探る
Vish 動画番組の新企画が始動!
自らが手掛けるルアーシリーズを世に送り続けるプロアングラーにとっての「モノ作り」とは何か。
そして、発売から数多の年月が経っても色あせない、プロアングラーが自ら手掛けたルアー誕生のルーツ(源流)を探る。
それが、「Roots of Deps(ルーツオブデプス)」。
第一弾はご存じ「キムケン」、バスマスターエリートプロ・木村建太氏が手掛けるデプスのカバークランク「イヴォーク」シリーズの源流に迫る。
ここ最近は、新製品に関してのワードやコンセプトはSNSなどですぐに拡散される。これはありがたい話で、実際に発売前から多くの人が目にしたり耳にしたりする。
ただ、すでに発売されシリーズ化されているルアーのルーツ(源流)となる部分は、なかなか語られることが少なくなってきたのも事実。
この動画番組「ルーツオブデプス」では、デプスのルアーシリーズが生まれたルーツにスポットを当て、手掛けたアングラーがモノ作りをはじめたキッカケに着目した企画。
キムケンいわく、モノ作りをはじめるキッカケとなったのは、当時出場していたトーナメントで使うルアーがほしかったから。
誰もが経験のあることで、若かりし頃は経済的な理由などでルアーを次々に買えなかった。
ならば自分で作ってみようということで、キムケンがはじめてモノ作りで製作したのは「ワーム」だった。
この自作ワームを皮切りに、次はハードルアーを作るべく、キムケンが手掛けたハードルアーのファーストショットは木を削ったモノ。
木を削っていろいろなルアーを作るうちに、バラツキや完成を早めるにはどうすればよいかを模索した結果、発泡素材と出会うこととなる。
この発泡素材で作りあげたハードルアーが、現在のイヴォークシリーズの元、つまりルーツ(源流)になっている。
様々なルアーを作っていくうえで、まったく同じモノを均一に作る方法を考えた際、材料を削っていくのではなく、型に流し込んでやれば同じモノを均一な状態で製作できる。
そこでベースとなるルアーを削って作り込み、ウレタンフォームで型を取って製造を開始。
この製法で形になったモノを「イヴォーク」と呼びだしたのが、イヴォークシリーズの生まれた経緯。
実はこの時、すでに浮力を上に集中させる形状は完成していた。
このモデルが完成した当時は、今とは別のブランドで製品化。
知る人ぞ知る釣れっぷりを凝縮したハードルアーとして世に放たれた。
モノ作りを軌道に乗せてからしばらくし、デプスから声を掛けてもらったのが、現在のイヴォークを手掛けるキッカケとなる。
今までにウッド素材や発泡素材で試行錯誤しながらモノ作りをしていたキムケンにとって、当時の製法ではルアーの弱点や限界があると気づいてきたとのこと。
その弱点とは、ABS樹脂じゃないとできない型があるということ。
そのため、新たな思想で外観を作り込んでいったのが、発泡素材で作ったプロトクランク。
予約の取れない人気プロガイドとして年間300日以上も琵琶湖に浮く生活を続けながら、時にため池や河川、関東の霞ケ浦水系などをはじめとする日本全国のフィールドで投げマクり、作っては投げ、納得いかない所は修正しながら釣りマクり、現在のイヴォークの元を作り込んでいった。
キムケンのコダワリは、自分が求めるクランクベイトの理想を実現するボディスペックの具体化。
イヴォークシリーズでかなりこだわったのが、ルアーの内部構造。
浮力を確保するための空気室と、低重心化するためのウエイト位置。
さらには、ハードな使用に耐えられる強度を求め、再び試行錯誤しながらイヴォークをマッシュアップする日々が続いた。
ABS樹脂でしかできない形状やバランスを、さらに追及していったのも、この頃。
この苦労を乗り越えて生まれたのが「イヴォーク1.2」。
自ら製作したイヴォークを完成まで導くモノ作りにおいて、ルアー以外の副産物も生まれた。
それが、ルアーに付けるトリプルフック。
リューギのピアストレブルもイヴォーク1.2開発とともに完成した。
イヴォーク1.2を作りあげる中で必要だったのが、前後のフックサイズが異なる点。
フロントが#6でリアが#4というところ。
イヴォーク1.2の開発コンセプトや基本性能を最大限に引きだすため、障害物に対する抜けのよさを高めるには、このフックバランスがベスト。
重心移動ナシで飛距離を稼ぐなら、フックのウエイトも後方に持っていけるバランスの具体化。
そして、日本全国で釣りマクることでデータ化したのが、釣れた魚の8割がリアフックに掛かっていたこと。
それらのデータから、イヴォーク1.2のベースとなるフックサイズのバランスが固まったとのこと。
このフックバランスはイヴォーク1.2だけのモノで、のちに生まれるイヴォーク1.8には該当しない(1.8は前後とも#5)。
イヴォーク1.2の完成とともに、キムケンのイヴォークに対する開発熱はさらに加速することとなる。
イヴォーク1.2の完成で、次に着手したのがイヴォーク2.0。
1.2と同じく猪突猛進系のカバークランクだが、探れるレンジはさらに深いゾーン。
1.2のボディ規格で潜らせても浮力的に不安があるところから、ボディサイズを大きくすることで、オリジナルとそん色ないハイピッチアクションと直進性、回避性能を具体化。
イヴォーク2.0でも自身の考えるコンセプト通りのモノ作りができた。
ただそのあとにやってきたのが、マグナムクランクの時代。
イヴォークシリーズはご存じの通り、水深別で1.2、1.8、2.0、3.0、4.0のラインナップだが、1.2の次に2.0。その次は3.0ではなくマグナムクランクの4.0が先。
3.0はそのあとで、1.8の製品化はもっとも後発となる。
当時、琵琶湖ではギル狙いのビッグバスパターンが激ハマりし、その中核をなしていたのが「マグナムクランキング」。
恐ろしいまでの破壊力を味わうと使わないワケにもいかないほどの大ブームとなるが、キムケンはすでにマグナムクランクも着手。それがイヴォーク4.0。
オリジナルの1.2や2.0と同じコンセプトのままボディを大きくすると、マグナムクランキングでは扱えないほどの抵抗で、まともに釣ることもできなかったそうで、イヴォーク4.0に関しては完全にマグナムクランクとしてのボディ形状を採用。
クランクベイトのイヴォークシリーズの中で、マグナムクランクのイヴォーク4.0はイヴォークシャッドに近いイメージ。
当時のブームも強烈だったが、イヴォーク4.0がもたらす釣果も強烈。
そのあと、必要性から開発に着手したのが、イヴォーク3.0。
マグナムクランクではなく、カバークランクのイヴォーク2.0に寄せたモデルで、3.0に求めたのは、回避性能+ボディサイズのインパクト。
2.0よりも深いレンジを探れるモデルとして作りあげたが、この時点でシャローからミドルレンジを刻めるイヴォークのシステムクランクとしてのベースが完成した。
そしてキムケン自身が普段の活躍の場とするアメリカのフィールドで必要不可欠だったイヴォーク1.8が完成する。
イヴォーク1.2のボディプロファイルで、さらに深いレンジをトレースできるイヴォーク1.8。
1.2よりも一段下のレンジをさらに丁寧に巻けるモノとして使っていたが、ベースとなるタイプはかなり以前にプロトで製作。
イヴォーク1.2のリップを自ら成形して使っていたのが、イヴォーク1.8のベースになったもの。
完成したイヴォーク1.8は、主戦場となっているアメリカのフィールドで多用しているが、アメリカだけじゃなく、日本の身近なフィールドにもマッチしたコンセプトやデザインなのは、キムケンの心意気!
■Roots of Deps 木村建太×イヴォークシリーズ本編