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Roots of Deps(ルーツ オブ デプス)シーズン1 Roots of Deps(ルーツオブデプス) 木村建太×イヴォークゼロ

Roots of Deps(ルーツオブデプス) 木村建太×イヴォークゼロ

そのルアーが誕生したルーツを探る!今回は「ZERO」

Roots of Deps【ルーツオブデプス】では、発売されてからも色褪せることなく輝き続ける、プロアングラーが手掛けるルアーシリーズ生誕のルーツ(源流)を探る動画番組。

第一弾はイヴォーク(クランクベイト)シリーズをお届けしたが、第二弾は「イヴォークゼロ」誕生のルーツに迫る。

イヴォークゼロといえばキムケン、キムケンスタイルといえばイヴォークゼロ投げとかんとね! とまで本人がいっていたほど、Vishキムケンスタイルのロケで実戦テストを兼ね、長きに渡って作り込んできたルアーの1つ。

イヴォークゼロといえば、テールにセットされた金属製のプロップが特長的な、通称・プロップ系ジャンルのハードルアー。

イヴォークゼロのコンセプトはクランクと変わらず猪突猛進!

そのため、ボディはクランクベイトのイヴォークをベースに製作。

キムケンがもともと使っていたプロップ系は他社のモノ。

この系統は使う状況を選ぶルアーでもあり、もともと付いているプロップはボディ素材と同じくプラスチック素材のリアボディと同化したブレード。

水面を叩く時のサウンドはトポントポンと激しいが、使っていた当時はその音自体が水中まで響いていないことに気づいていた。

つまり、水中の魚を呼び込むほどのパワーを感じていなかったとのこと。

キムケンがプロップ系ベイトで求めたものは「擦れる音」。

プロップが水面を叩く音よりも、金属が擦れるサウンドに可能性を感じていた。

この金属同士が擦れる音=バズベイトのサウンドと同じ要素だった。

最初に着手したのはイヴォークゼロのオリジナルサイズでもある150。

この150モデルのボディベースはイヴォーク4.0を採用。

リップを取ったボディをそのまま無垢のウッド素材で作ってもらってから、イヴォークゼロのプロトモデルを作りあげていくこととなった。

キムケンがイヴォークゼロのテストを開始したのは秋終盤頃で、そのタイミングは魚も沈み気味となって誰もトップを使っていない時期。

実際、プロトでテストをはじめたのが11月過ぎと遅かったが、なんとこのタイミングで恐ろしいほどのビッグバスが連発。

今までになかったこの破壊力、魚を呼び起こすパワーを体感した瞬間に、コレは絶対作りたいと確信!

ここからイヴォークゼロとの長い旅がはじまった。

イヴォークゼロの構造概念を探る

イヴォークゼロに関しては、キムケンとともに長い間、キムケンスタイルロケを通じてプロトタイプから完成までの長い道のりを見守ってきたルアーの1つ。

120と150の2モデルで、120がイヴォーク3.0、150はイヴォーク4.0がベース。

クランクのイヴォークボディがベースだが、もっとも異なる点はアイポジション。

クランクと違って水面で水平姿勢を保ちながら引いてくるタイプのルアーだけに、クランクと同じ位置にアイを付けると水面ではなく表層や水面よりも下に潜りやすくなる。

そのため、ボディの頭部にアイを付けることが非常に重要で、大きなコダワリの1つ。

さらに、テール部がプロップのため、ウイードなどが絡んでプロップが固定されると、ボディごとグルグル回転しやすかった。

さらに、重量もあるうえキャストした際にも回転しやすかった。

この時はラインのヨレもヒドく、テスト当初は回っても問題ないようスイベルなどを介して使っていた。

ただ、頭頂部のアイ自体をスイベル内蔵型にすることで、ボディの回転を抑制。

今まで向き合ってきたトラブルも大幅に減らすことができた。

ここから飛躍的に開発が進むと思っていたが、使い込むうちにまだまだ解消しなければならない点が見えてきた。

使用できるプロトは完成したが…

様々な問題点と不安を解消しながら、ある程度の完成度を持つプロトタイプが仕上がってきたイヴォークゼロ。

ある程度の型が見えてきたイヴォークゼロのプロトだが、以前から使っていたプロップ系のデメリットを考えた時、既存のルアーはほとんどボディ自体が長いタイプ。

ロングボディにもかかわらず、セットされているフックがボディ全体をカバーできていなかったとのこと。

水面までバイトしてきても乗らないケースが多く、この時は仕方のないものだと思っていた。

イヴォークゼロを手掛けるにあたって考えたのは、ストライクした魚のフックアップ率を落とさないためのフックセッティング。

ボディに長さはないが、そこそこボリュームがあるため、フロントフックのサイズを限界まで大きくする。

特にフロントのトレブルフックのサイズもアップしつつ、さらに思いきって3本から4本にしようと考えた。

当時は4本針もなくテスト段階ということもあり、大型のダブルフック(ピアスダブル)を熱収縮チューブを使って背中合わせで4本針仕様にチューン。

さらに、ボディ側のアイをスイベル型アイに変更してファイト中のフックオフを軽減できるように変更。

この発想が、のちのピアストレブルを作るキッカケとなったとのこと。

仕上がってきたプロトを使い込むうちに、浮力確保と低重心化を進めるうえで1つ問題が発生。

それが、ウエイトを低重心化する際にスイベル型アイが入ることでウエイトが前後で寸断されてしまうこと。

ここでさらなる発想が生まれる。

ボディではなく、フック自体にスイベルを付ければ、ボディ内部の構造がすっきりして、ウエイトの低重心化も進めやすい。

フックの軸が回るピアスクアッドの構想&完成により、イヴォークゼロもスイベル型アイからΩ型のアイに変更。

ウエイトも文壇されることなく、内部構造の簡素化に成功。

ここで生まれた4本針・ピアスクアッドも、イヴォークゼロ専用ではなく、何にでも使える新機軸クアッドフックとして世に輩出できるようになった。

この時点で、ボディ側に感じていた問題は払しょくされた。

そしてここからも大事なところ。

プロップ系の命、イヴォークゼロの命でもある金属ペラ。

テストモデルでは、キムケン自身が手で曲げたモノを装着。

水の噛み方やサウンドを確認しながら調整できる手曲げのペラで使っていた。ただ、手曲げでは同じモノを作れない。

手で曲げたペラは悪ければその場で曲げて調整できるが、よいモノだとまったく同じモノが作れない=再現性はなかった。

キムケンがイヴォークゼロのペラに求めたのは、よい摩擦音の再現性だった。

水中にしっかり響いて魚を呼び起こせる金属サウンドを、限界までだせるようになるまで様々なタイプを使い比べた。

金属サウンドも大事だが、摩擦の抵抗が大きくなってもボディが横倒れしないようになど、完成が見えたと思ったゼロに新たな障壁が立ちふさがることとなる。

このペラの金属サウンドと巻いた時のボディバランスの両立が、イヴォークゼロを作る時の最大のポイントとなった。

ゼロの心臓部、カラーとペラの組合せ

プロップ部分の作り込みに直面した際、重要だったのが、カラーとペラの組合せ。

事前に思っていた通り、ペラは曲がりにくくて強度のあるジュラルミン素材じゃないと話にならない。

さらに、その金属ペラはどの部分と擦れることで、一番よいサウンドを奏でることができるか?

そう考えて接触面にこだわった結果、今の構造ができあがった。

金属同士が接触しても、きっちり平面で合わせないとベストなサウンドも長続きしない。そして、カラーも固定しないと意味がない。

そのため、ペラに接触するカラーもオリジナルで製作。

硬い素材のペラよりも一段軟らかいものが必要。カラーを専用で作った理由はここにある!

カラーも回らずに固定できる形状を模索。

軟らかいカラー側の素材が擦れて削れることで、回転時の抵抗を高めることなく平面同士のベストな擦れ具合を両立できた。

バズベイトのようにピークを迎えてすぐ壊れることのないように、軟らかい素材で削れてくれるカラーは少し長く設計。

ここにベストな金属サウンドを長く維持できるギミックが完成した。

そこから2-3年巻き倒しても、2週間ほど連続で同じモノを使い込んでも壊れない状態になったが、急にリアフックがペラを拾う現象に見舞われた。

このトラブルを減らすには、リアフックの可動域を減らすこと。

この時点でできることは、フックに近いパーツの改造!

異素材で長めに製作したカラーを、フックのアイにかぶせることで解決。

リアフックの可動域を抑えることと、カラー自体を回転を固定。

少し特殊な形状だったカラーの理由はココにあった。

この段階で、求めていた金属サウンド、安定性、急に立ちふさがったトラブルもある程度は解消された。

金属パーツの接触面について

イヴォークゼロを作るうえで一番苦労した点が「金属の接触音」。

命ともいえるサウンドを奏でるパーツについての苦労話はまだまだある。

一段進むことができたプロトタイプは、安定してよい音がだせるようになった。

構造はもちろん、ペラの方にも新たなギミックを採用。

それは、「まっつん」こと松下雅幸氏が手掛けるマツバズのペラからヒントを得た楕円形状の穴。

イヴォークゼロのペラの後部の穴を新円から楕円に変更。

リアのヒートンを楕円の穴に通した時、ペラにグラつきや遊びが生まれることで、水の噛みも速くなり、弱い力で回りやすくなる。

さらに、ペラの軸となる中央部に空いた楕円の部分にもシャフト(ヒートン)を接触できることが分かった。

キムケンの求めていた接触系の金属音が、カラーの接触部以外でも発生するようになった。

シャフトとカラーで二重の音を作ることができ、今までになく騒がしい金属サウンドを実現できた瞬間だった。

ここからまた再び大きな問題が勃発。

リアのペラを通しているヒートンだが、プロト時代は木に打ち込むタイプを使用していた。

最初のうちはヒートンが短すぎて抜けたりしたこともあったが、その理由はヒートンのネジ部分にあった。

リアのヒートンは命の金属ペラを支える特殊なモノ。ある程度の長さも必要で強度もいる。

その分、ボディ内部にしっかり食いつくヒートンのネジが必要となって、ネジ山もできる限り粗くして食いつきがよくなるようなタイプを試していた。

その状態で過酷なテストを繰り返すうち、ネジ山を切りはじめた部分から折れてしまう事例が発生!

強度が必要なうえ長いヒートンで、ボディに食いつくネジ山のモノなど、なかなかない。

ただタチが悪かったのは、折れたネジ山部分がボディ内に残ってしまって、新たにネジ込むこともできなくなったところ。

このトラブルを乗り越えるべく、ヒートンのネジ山を機械用のファインスレッドに変更。

細かく浅めに切られたネジ山で、まずはヒートンが持つ軸とネジ山の強度の濃淡をなくす。

副産物としてシャフト自体も少し細くなり、ペラの前部の穴も小さく加工できるようになった。

ペラの前部は固定され、後部は遊びがある楕円。これでさらに水噛みと接触音がブラッシュアップされることとなる。

不安視していたヒートンの強度だが、リアボディ内部に極小ナットを埋め込み、そこにヒートンをネジ込む構造に変更。

強度の濃淡をなくした新型ヒートンのデメリットと感じていた食い込みの浅さは、ボディ内蔵ナットにネジ込むことで解消!

ここまでの細かい配慮はキムケンならでは。

いつまでも使い込めるルアーとしてこだわる木村建太のモノ作りへの姿勢。

キムケンいわく、ボディやウエイトバランスはもちろん、一番苦労したプロップ部分を完全に作り込むことで、ペラが曲がった時やワイヤーがダメになった時でもペラとヒートンを交換すれば、ずっと使い続けられるボディにしたかったとのこと。

大型ルアーやパーツの多さゆえ、ルアーの単価も少々UPする。

一部が破損してもパーツ交換することで、いつまでも大事に使い続けられるモノになった。

こうして完成レベルに到達したイヴォークゼロは、ペラも完全な金型で製作。

ルアーの精度もバラつきなく均一なモノに仕上がった。

多くの経験と実績で完全無欠のオリジナルとして完成!

そんなイヴォークゼロ、最初に手掛けていたオリジナルサイズはイヴォークゼロ150。

その後にテストを進めていた少し小型のタイプはイヴォークゼロ120となった。

キムケン自身、水深のあるフィールドやリザーバーではイヴォークゼロ150がメイン。

風波があっても圧倒的な存在感とパワーを放つのは、荒れた環境でもスピードを与えやすいオリジナルのイヴォークゼロ150。通常のタイミングならば、扱いやすいのがイヴォークゼロ120と位置付けている。

キムケンいわく、一般的に多くの人が使っているのはイヴォークゼロ120。

ボディサイズが小さいイヴォークゼロ120は、浮力とバランスからオリジナルサイズほど速く巻くことができない。

状況によって使い方次第では横倒れすることもあるので、横にコケないギリギリのスピードで巻くことが、120モデルを乗りこなすコツ!

キムケンいわく、イベントなどで直接ユーザーから使い方を聞かれえることが非常に多かったそうな。

そのユーザーの使い方を聞いていると、横倒れしやすいというユーザーたちに共通していたのが、投げた後の竿のポジション。

横倒れするというユーザーは圧倒的に、イヴォークゼロ120を投げてすぐに竿を寝かして巻いている人が多かった。

そのため、ここではその理由も語ってもらった。

アイポジションをあえて上に設定したイヴォークゼロシリーズだが、浮力が小さいイヴォークゼロ120は、キャスト後に竿を寝かして巻くと、ラインも水面に落ちて真横から引っ張る姿勢になる。

そうなることで、ルアーも横に引っ張られやすくなりコケやすくなる。

これは浮力自体が小さいボディのため仕方のないこと。

これを解消するのは簡単!

キャスト後にロッドを寝かさず立ててラインを持ちあげる状態で引くだけでOK。

あとは、近づくにつれてロッドを倒していけばイヴォークゼロ120本来のポテンシャルを最大限に引きだすことができる。

こだわり抜いて完成したルアーほど、本体に込められたコンセプトを深く理解することで、さらに進化を発揮する! これはキムケンが手掛けるルアーをはじめとする多くのルアーにも該当。困った時はルーツを探るのも大事といえる
■Root of Deps 木村建太×イヴォークゼロ

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