独創的なスピンテールが生まれたルーツとは?
独自の経験や自身の理想を形にするハンドメイドビルダー・渡部圭一郎。
氏が手掛けるルアーの1つにKROスピンテールというアイテムがある。
KROスピンテールを手掛ける前に、渡部氏がスピンテールメタルバイブを作りはじめたキッカケに迫る。
元々、渡部氏はソルト用の1ozや3/4ozのスピンテールジグを使っていたとのこと。
その理由は、バス用のモノがなかったことと、当時はリフト&フォールやタダ巻きするだけでホームフィールドの桧原湖でよく釣れたため。
使っているうちに感じたのが、投げて巻くだけでブレードにアタックしてくるぐらいの好反応っぷり。
この反応から、バスはブレードが好きなことを実感したそうな。
使い込むほど、自身の理想が膨らみ、ありモノのスピンテールジグから自分がほしいモノに対するモノ作り心が働くことになり、自らオリジナルのスピンテールに着手する。
一般的な形状で自身の経験と理想を結び付けていくうちに気づいたのが、使っていたソルト用もそうだが、アシストフック付きのタイプがなかったこと。
あれほどバスはブレードアタックしてくるのに、それを掛けるためのアシストフックがない。
その理由から、どうにかしてブレードバイトも掛けることができるスピンテールジグを作りはじめることになる。
自作スピンテールの構造
使い込んでいくうちに仕上がっていった自身のスピンテールの構造だが、メタルバイブのボディにテール部がブレード。
フックはフロントアイにぶら下がったトレブルフック。
ただコレではブレードバイトを取ることができない状態。
ここからアシストフックを付ける工夫を考えたが、ブレードに直接アシスト的なフックを取りつけると、ブレードの回転に悪影響を与えることになる。
渡部氏の理想は、バスがブレードにバイトする時に、吸い込まれる時の水流変化でアシストフックも吸い込まれるようにできないだろうか。
そういったギミックを追加するため、アシストフックはブレードに干渉しない程度でブレード位置まで伸ばしたい。
水流で動くような可動式のアシストフックにすれば、ブレードバイトでフックごと吸い込まれるのではないか?
リアボディに細いワイヤーを搭載し、小さなトレブルフックを後方まで伸ばすことで、今まで掛からなかったブレードバイトは大概掛かるようになった。
この段階で、スピンテールにおける独自の経験と理想が1つの答えになった。
自作スピンテールからKROスピンテールへ
試行錯誤しながらたどり着いたスピンテールのアシストフックシステム。
ここからサポートしてもらっているデプスの開発チームとの製作へと移っていく。
ほぼほぼ理想に近づいた渡部氏のスピンテールだが、作るうえで非常に手間が掛かる。
ボディを金バサミで切ることからはじまり、型取りしてから鉛を流し込む。
さらにテール部のボールベアリングも溶接で固定する。
生産効率の悪さと、ベアリングが錆びたら終了というコスパの悪さに悩んで相談したところ、デプスの開発チームから製作してみましょうか? と話があった。
お互い時間を費やし開発していく中で、もっとも時間が掛かったのはアシストフック。
ブレードに絡まないこと、魚に掛かること。ワイヤーパーツもいろいろな形状を試す。
テストサンプルもかなり多く作って納得のいくモデルとして完成したのが、KROスピンテール。
ブレードバイトをモノにする、スピンテール。
『KROスピンテール』は、ストレスなく高速回転するオリジナルブレードが生み出すフラッシングと波動の集魚効果でバイトへと導き、獲り逃してしまうようなブレードバイトをも、アシストワイヤーフックによりフックアップ率を大幅に上げてくれます。
安定したスイム姿勢とフォール姿勢の低重心サーキットボードボディは、ブレードやフックと絡むライントラブルを大きく軽減してくれ、ハイシーズンはもとよりウィンターシーズンも必携となるスピンテールです。出典:デプス
完成したKROスピンテールは、アシストワイヤーフックもワンタッチで脱着可能な優れモノ。
今まで自作で溶接固定していたボールベアリングも、回らなくなったら交換できるシステムを採用。
渡部氏いわく、自作していたモノよりもかなりバージョンアップしたモノになったとのこと。
元々オリジナルのタイプは20g前後のウエイトだったが、オカッパリでも扱いやすい3/8ozモデルとして製品化に決定。
タダ巻きでもリフト&フォールでもバイトを引きだしやすく、何よりブレードバイトを絡め取れる今までにないスピンテールとして自身も納得の完成度となったのが、KROスピンテール。
特長的なアシストワイヤーフックの理由
KROスピンテールでもっとも特長的かつ独創的な構造が、アシストワイヤーフック。
渡部氏いわく、抵抗が少ないメタルボディが素早く沈む時、また見切られないスピードでリフトアップした際は、ワイヤー以外の軟らかい素材だと抵抗を受けてしなるとのこと。
これは重たいウエイトだとなおのことで、スピードがUPするほど、瞬発的な動きが強くなるほど軟らかい素材はしなるので、フックとブレードが干渉。
その結果、ブレードの回転不良に結びつく。
このトラブルを解消したのが、現在の形。
ワイヤーの太さや形状、ボディ側の形状もトラブルレスを追求した結論。
万が一、アシストフックとブレードが干渉してしまうようなことがあれば、テールのベアリングは上に曲げて調整することもできる。
タダ巻きやリフト&フォールはもちろん、フォーリング主体のアプローチでもトラブルを回避できる作りを構築。
新たに追加された3/4ozモデルの理由
こうして完成したKROスピンテール。製品版は3/8ozだが、渡部氏の要望もあり2025年に重たいウエイトが追加される。
元々、渡部氏が自作で使っていたのは20g前後ということもあり、新しく追加されたのは3/4oz(21g)。
3/8ozと比較すると約2倍だが、ウエイトバリエーションが増えれば、さらに自在なアプローチが可能になる。
その理由として、様々なウエイトがあることで、さらに狙えるレンジも細分化できる。
そして、ここ近年よく耳にする「スピードの必要性」。
従来の3/8ozモデルだと、巻くにしても落とすにしてもスピードが足りないことで、魚に見切られることも多くなったとのこと。
特にボトム付近でリアクション要素を高めたい時は3/4ozクラスのウエイトが非常に役立つとのこと。
プレッシャーによって今まで以上にルアーを見切るバスに対して、バスの目の前からルアーを消して落とす。
こういったリアクション要素を持ち合わせたスピンテールは、あれば非常に重宝する。
さらに、こういったシチュエーションも多いため、重たいモデルでしか引きだせない反応も存在するそうな。
水深10mラインや、それ以上の深い場所も攻略可能。それがKROスピンテールの3/4ozモデル。
軽いモデルも必要?
現在は3/8ozと3/4ozの2モデルとなったKROスピンテール。
渡部氏に作り手として、軽いモデルが必要か、作ってみたいか聞いてみた。
氏いわく、軽いモノはぶっちゃけ、イガジグスピンがあれば大丈夫!
KROスピンテールは形状から見て、このままで軽いモデルは考えにくく、現状では必要ないという考え。
大きいサイズ展開について
ボディサイズは同じでウエイトが2モデルのKROスピンテール。
今以上に大きなサイズは必要か?
渡部氏個人的には、大きなサイズで重たいモノがあれば使いたい。
その理由は、KROスピンテールで完成させたアシストフックのシステムにある。